連載 新自由主義とは何か

ー無政府主義との相違

新自由主義とは何か、前回に引き続き今回はよく比較されるアナキズムとの相違点や類似性について解説させて頂く。 まず前提として、新自由主義は既に定義が困難であるものの、基本的に政府の裁量権といったものを非難する。だが、国家の存在そのものは積極的にその役割を含めて肯定する。例としては、立法・司法・軍事・貨幣の供給などの規制や一部サービスだろう。では、無政府主義ではどうか?当然、これらは全て否定される。かわりに、主な考えとしては慈善団体や互助組織、民営裁判所に自警団といった自発的な共同体等が(自然法や)自発的な秩序の下これらを代替するとされる。無政府主義にも当然種類は非常に多くあり、一概には新自由主義と同じく語ることができないが、支配的な強制力を持った権威を否定することは共通している。 つまるところ、この二つの最大の違いは支配性を持った枠組み作りを許容するかという点である。前者としては、市場(≒社会)は有効であるものの失敗がないわけではないし限界がある。故にそれを外部から正すあるいは補助する機能としての国家を認める。それに対しアナキズムは市場というのは失敗をも乗り越える、或いはその失敗の問題よりも政府そのものに対して問題があると認識する事などから認めない。では類似する点はどうか?それは、政府の能力(や権威)に対する疑義と自発的に動く市場の擁護だろう。無論、その度合いは新自由主義においては小さく、無政府主義では大きく、その間には先ほど述べた様に枠組みを擁護するかという点においては明確かつ絶対的に超えることが困難な違いがある。しかし、その方向性は非常に近いと言えるだろう。あくまで、(現在の)政府の大部分は民間の自発的な共同体等で置き換えられると彼らは考える。
 しかし、やはり当然ではあるがこれらの思想はあくまで理想である。現実として実新自由主義社会や無政府社会は理念通りの完全なものにはならなっかった。とはいえ、(他者の自由を侵さない限り)人間は最大限の自由を持ち、自分の好む自由に離脱可能な社会に属せる状態が最善であり、各個人の良心のもと支え合える社会が理想である。最後に、このような場を提供してくれた解放区新聞に感謝を。追記 私自身は無政府共産主義時代があり、そういった自発的な共同体が資本主義社会にあることを常々夢想してい
る。(朱月蒼海)